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アロマフレッシュ

■「現役経営者、104歳が自転車でコーヒーを配る」

業種:コーヒー豆の輸入・焙煎店
アロマフレッシュ

103歳で現役。「高齢者の希望の星」と言ったら、聖路加国際病院名誉院長の日野原重明氏を思い浮かべる人が少なくないだろう。しかし、世の中は広い。日野原氏より1歳上をいく104歳の現役経営者が東京・西荻窪に居る。コーヒー豆の輸入・焙煎店「アロマフレッシュ」を営む安藤久蔵店主がその人。開業は85歳の時で、以来、およそ20年間、コーヒービジネスを一人で切り盛りしてきている。明治、大正、昭和、平成の四つの時代を生き抜いている安藤店主の“ミラクルぶり”たるや…。

明治44年(1911年)千葉県生まれ。慶應義塾大学理財科を卒業し、三井物産を経て、家業の網元を継ぐ。50歳で引退し、学生時代からの趣味の登山に没頭。国内外の山々にかたっぱしから登頂する。アフリカ大陸最高峰のキリマンジャロに挑んだ際、地元のポーターたちと親しくなり、毎年のように行き来するようになる。月日が流れたある時、栽培しているコーヒーを日本で売ってくれないかと頼まれる。「よし分かった、やろう」と、85歳の起業に踏み切り、今日に至る。

「人の喜ぶことをする。これが大事」「コーヒーをやっていると若い人が寄ってくる。それが若さの秘訣」「辛抱した人が必ず勝つと、年をとって初めて分かる」「今でも自転車でコーヒー豆を届ける。骨を折ってギーコギーコ、こいでいくと、最後の一粒まで粗末にしてはいけないと思ってくれる。それが狙い」「山や商売をやって分かるのは、人生は金じゃない。感動が一番大切だということです」―。“安藤語録”には、仙寿(100歳以上の呼称。仙人の域に達したとして、そう呼ばれる)の知恵が詰まっている。

「コーヒーを売るだけじゃない。カフェを開きたい、焙煎をやりたいといった人の相談に乗って応援している」(安藤店主)。実際、仙寿の知恵を授かろうと多くの人がアロマフレッシュを訪れているという。ニートや離婚を考慮中の人など、コーヒービジネスとは関係ない人生相談にもあずかり、「仲人も3組決めて、忙しい。コーヒー屋と言うより,よろず屋になっている」(同)。

昭和初期にカフェを知り、カフェで小津安二郎や太宰治と知り合った。阪急東宝グループ創業者の小林一三氏や、「メザシの土光さん」で知られる土光敏夫経団連元会長をはじめ経済界のお歴々とも親交があった。「横浜の土光さんの家まで銚子沖で獲れたイワシをよく持っていったものだ」と思い出話も披露する。彩り豊かな日々を、1世紀を超えて積み重ね、自転車でコーヒーを配る今日がある。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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