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(株)悠心

■「シニアベンチャーが次世代液体容器で新市場創造へ」

業種:プラスチック容器の開発
(株)悠心

「昔は士農工商プラスチックと言われたものです」。プラスチック製の液体用容器を主力製品とする悠心(新潟県三条市)の二瀬克規社長は、数十年前にプラスチック関連業界が置かれていた状況を江戸時代の身分制度を引き合いに出して説明する。そのプラスチック事業をライフワークと定め、次々と独創的な製品を開発しているのが二瀬社長だ。「日本の技術・製品が世界一」(二瀬社長)というプラスチック液体容器で、世界一の一角を占める自社技術・製品をさらに進化発展させ、新市場創造へとつなげていく。

同社は平成19年に二瀬社長が起業した。二瀬社長は長年、プラスチック製包材などを手掛けるメーカーで技術者・研究者として働き、R&Dセンター本部長も務めたキャリアの持ち主。長く籍を置いた企業で“やり尽くし感”と“やり残し感”の両方を持つようになったことから、独立し悠心設立に至ったという。悠心を立ち上げて間もなく、醤油やタレなど液体包装の小袋「アンプルカット」で会社を軌道に乗せる。続いて、新エネルギー総合開発機構(NEDO)の助成などを得て、『世界初、次世代液体容器』を謳い文句とするパウチ・イン・ディスペンサー(PID)を開発、商品化する。

PIDは逆止弁の効果で、容器内の液体が空気に触れないようにして、容器開封後も密封状態を保持し内容物の鮮度の劣化を防ぐという容器。斬新な技術・製品であると高く評価され、発明大賞、中小企業優秀新技術・新製品賞、ものづくり日本大賞、文部科学大臣表彰など各賞を総なめにした。醤油やエゴマ油の容器として用いられ好評を博しており、さらなる用途開発への期待が高まっているところだ。

PIDは経済産業省の新制度「新市場創造型標準化」において「液体用高機能容器に関する標準化」のテーマで標準化活動が図られることも決定している。二瀬社長は「標準化が進めば、海外市場の開拓に弾みがつく」と見て、海外進出計画を練り上げている最中だ。「液体容器の需要は人間の数に比例する。世界人口が72億人から2050年には90億人へと増えていく中で、2050年の世界市場は最低でも30兆円規模に達する」と“鳥の目”からの事業プランを描いている。

工学博士でもある二瀬社長は、研究開発面において、売上高5億円弱(前年実績)のベンチャー企業であることを少しもハンディキャップとは感じていない。「クリエーション(創造)は人数ではなく、1万人対一人でもいい勝負になる。むしろ、日本では大企業の方に大企業ゆえの制約や限界が感じられる」と見る。40年以上前、二瀬青年が社会人に成り立ての頃は士農工商プラスチックの時代だった。今、ベンチャーならではの独創の技術・製品を引っ提げて、プラスチック士農工商への“下剋上”を企てている。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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