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2009年の記事

 

 

 

(株)箔一

 

伝統に軸足を置き商品開発でブランド化

業種:金箔製造
(株)箔一

金箔の産地として、日本の98%という圧倒的な生産規模を持つ金沢市。だがその内容はというと、仏壇などへの材料供給が主で、「金沢箔」としてのブランドの認知度はあまり高くはなかったのが実情。その理由はおそらく、伝統を引き継ぎながらも新しい時代にマッチした商品開発を行うのは、金箔産地として歴史の重みがある分、かなり勇気のいる、困難を伴う作業であったのだろう、と想像はできるのだが…。

こうした伝統に革新的な商品開発を加え、金沢箔を全国ブランドとして著名にさせた中小企業がある。(株)箔一(金沢市)がそれである。同社を興したのは、京都から金沢の箔業者に嫁いだ浅野邦子会長だ。1975年に箔一を興し、小箱や皿などの工芸品から徐々に工夫を凝らしていき、日本で初めてといわれる金箔打紙製法による、あぶらとり紙などを開発、金沢箔のブランド品を次々に世に送り出していった。

こうした中で、「伝統を無視しているのではないか」といった批判の声も挙がったが、会長の長男である浅野達也社長は「(会長は)自分がやるしかないと必死に取り組んだのが、いい結果につながったのでは」と振り返る。地域の職人が打った箔を、同社は木、金属、布など様々な素材へ加工している。建材関係では、金箔をフィルムではさむことで耐久性を上げ、外装での活用や複雑な加工を可能にしている。

また「食」分野も柱の一つ。昔から金箔は菓子の装飾などに使われてきたが、工芸品で使った残りを利用するといった考え方でしかなかった。同社は2005年にHACCP対応の新工場を建設し、07年にはISO22000:2005(食品安全マネジメントシステム)の認証を取得。地域の先陣を切って食品衛生への本格的な取り組みを行い、市場開拓につなげていった。

こうした積極的なモノ作り、品質管理の取り組みが評価され、2005年8月には経産省の「第1回ものづくり大賞優秀賞」を受賞した。もっとも浅野社長は伝統の重みを認識、これを生かそうとする発想は崩さない。「伝統に軸を戻す」と言い切り、京の屏風絵の技術などを開発に生かし、伝統的な技法を貫く考えだ。難しい技術を守るには、古くて新しい信念と発想での挑戦が必要だ。伝統工芸を永遠に生かしていくことも中小企業の務めの一つであろう。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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