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2006年の記事

 

 

 

 

 

株式会社片山商店

 

■産地の復活賭け、新システム開発に挑む

業種:多品種小ロット織物生産システム開発
株式会社片山商店

「地域ブランド」がすっかり流行語となっている。伝統的産地という表現はまさに地域ブランドの”先輩格“。だが、伝統に頼るだけでは先細るのが常。産地が生き残るには、たゆみなく現代化、先端化へ挑戦することが求められる。先染め織物で知られる播州織の産地、兵庫県西脇市の株式会社片山商店(片山象三社長)の多品種小ロット織物生産システム開発への挑戦は、まさに、伝統的産地を今の時代になんとか生き残らそうとする熱情にあふれていた。

播州織は、約200年の伝統を誇る世界有数の先染め織物。片山商店も創業1913年(大正2年)の老舗の機械商社だ。現社長は5代目。代々、地域社会、地場産業への貢献を社訓としてきている。商社と名乗るが、機械の販売だけでなく、機械の開発やアフターサービスも手がけてきた。近年、安価な輸入製品によって播州織産地も打撃を受け、生産量が大幅に減るなど産地経済は低迷、生き残りをかけ、付加価値が高く、輸入品との差別化がはかれる織り機の開発が急務となった。

ここに、同社を核に地元の産官学が結集し、新たなシステム「多品種小ロット織物生産システム」の開発がスタートした。従来、織物製造現場では、経糸(たていと)の色柄が変わるとその柄ごとに、経糸を準備する必要があり、消費者ニーズの多様化に合わせて「多品種小ロット生産」するにはコストと時間が大幅にかかる難点を抱えていた。この課題に立ち向かったのだ。苦闘の末、伸縮特性を持つ経糸を正確で均一な長さで巻き、一本の糸に色柄の異なる九種類の糸を自動的につなぐことが可能なシステムの開発にこぎつけた。この結果、付加価値がついた上、経糸の交換作業がいらなくなり、残糸の活用によるコスト低減も生じた。さらにデザイン性ある新製品開発などにより国際競争力も向上するなど、多くのメリットをもたらすシステムの誕生となった。

この成果は、多くの関係者の協力の賜物であったが、その創造性、革新性が高く評価され、2005年、第1回のものづくり日本大賞内閣総理大臣賞の受賞となった。伝統にあぐらをかいて失敗するケースもある。伝統の重さに押しつぶされてしまうものもある。伝統は衰退するものとのあきらめ派もある。片山商店の新システム開発にかけた情熱は、それらのいずれもの消極的な行動を見事にはねのけたものとなった。
 



著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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