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2007年の記事

 

 

 

ケージーエス

 

■マグネトロニクス技術から新製品

業種:産業用ソレノイドメーカー
ケージーエス


カセットデッキやビデオデッキはかつて花形商品だった。当然そこに使われる電子部品も大量生産された。ところが花形商品も時代の変化とともに成熟商品になり、やがて消え去る運命だ。需要の一巡や技術革新などが要因である。セットメーカーだけでなく電子部品メーカーも技術開発動向などを注視し、早めの対応をしないと成熟化という大波に呑み込まれてしまう。「ソレノイド」も今や成熟商品の一つだ。産業用ソレノイドメーカーのケージーエス(埼玉県比企郡小川町)は1953年に創業、それ以来、常に新しいことに取り組み地盤を築いてきた。

ソレノイドは電気エネルギーを機械的な直線運動に変換するもので、構造が簡単で安価なことやエレクトロニクス化の進展で、大量に使用されるようになった。とりわけ需要が爆発的に伸びたのは、カーステレオ用の「8トラックエンドレスカートリッジ」だった。さらにオープンデッキやカセットデッキ、ビデオデッキなど一時停止機能に用いるなどのためソレノイド需要が急拡大する。

産業用機器メーカーばかりでなく電子部品メーカーが相次いで参入したため、競争が激化したのは当然のことだ。そうした中でデジタル化の波に見舞われた。それまで成長商品だったものが半導体などデジタル部品に押され、市場の伸びは止まってしまった。同社も厳しい場面に立たされたが、同社は単に電子部品としての位置づけでソレノイドを生産していたわけではなく、ソレノイドの基本である「マグネットとエレクトロニクスの融合」を目指したマグネトロニクス技術の確立に軸足を置いていた。

同社は低衝撃ソレノイドの開発や、新領域の商品として視覚障害者向けの点字ディスプレイなどを手がけた。とくにソレノイド技術を生かした点字機器組み込み用セルには力を入れ、今では世界シェアの75%を確保するほどになっている。また、経営ポリシーとして「赤字受注はしない。他社が嫌がる短納期、小ロット生産は喜んで引き受ける」(樽松武男社長)という方針を貫いている。同社のホームページには「受注後最短3日目に出荷」と謳っているほどだ。さらに製品については、品質という価値を世の中に認めてもらうため「5年保証」を打ち出した。

ソレノイドそのものが市場から消え去ることは考えられないが、どんなに素晴らしい製品であっても、同じものが将来にわたり成長を続けるということはあり得ない。必ず衰退する時期が到来する。常に人より一歩先を読んだ経営をし、世の中に受け入れられる製品開発を進めることが、その後の成長につながるポイントになるだろう。  



著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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