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2009年の記事

 

 

 

株式会社南雲製作所

 

自動機よりも熟練の技が必要

業種:精密金型、精密部品メーカー
株式会社南雲製作所

「新鋭の自動化機械を導入するか、熟練工に頼るか−」。金属加工を営む中小企業が常に悩むテーマだ。新鋭機を導入する場合、多額の設備資金が必要だし、期待通り成果が上がるかどうかも不安だ。それでは「職人を」と考えても、熟練工は一朝一夕に生まれないし、素晴らしい技能を持った「職人」が簡単に就職してくれるかどうか分からない。

株式会社南雲製作所(新潟県上越市)は精密金型や精密部品のメーカーだ。同社はかつて「脱職人を目指し、自動化機械を大量に導入した」(南雲信介社長)ことがある。自動化機械を駆使することで、均質なものは作れたが、期待以上にはいかなかった。金型生産は職人の勘と永年培った技術に負うところが大きい。「金型設計や部品加工はノウハウの塊であり、熟練の技がものをい
う世界」(同)だったのだ。この反省から、今は職人の技を最大限に発揮したモノづくりに徹しているという。

無論、新鋭マシンを導入しないわけではない。すべてを旧来の作業に頼っていたのでは効率が上がらず、厳しい競争に太刀打ちできない。ただ「機械だけではだめ」(同)であり、機械と熟練の技がマッチしてこそ、優れた製品が生まれ、顧客の信頼に応えることが可能になる。同社では永年の経験と知識を持つ技術者をそろえることで、ハイレベルな職人集団形成を目指している。

例えば「金型は研磨に始まって研磨に終わる」(同)といわれるが、最終仕上げは研磨技術に長けた職人の技に頼る必要がある。微妙な最終研磨作業を機械だけに任せるわけにいかない。職人の感覚と感性が必要になる。指先に伝わる材料の温もり、機械の研磨音などを敏感に感じ取る。そして研磨材やマシンを微調整しながら、完成品に仕上げていくのだ。いくらコンピューターを駆使しても職人の持つ感覚には負けるケースが多い。この感覚は長い間、職人から職人に受け継がれ、熟練の技となっていく。

2007年度に同社の「情報機器用樹脂成形金型の研究開発」が経済産業省から「中小ものづくり高度化法」の認定を受けた。1台のマシニングセンターだけで製作できる金型を目指したものだ。実現すれば複数の工程が1工程に集約できる。すでに独自開発したオイルリングのプレス金型では、抜く、切る、つぶす、折る、曲げる、畳むといった加工を従来の3工程から1工程にした実績を持つ。しかしマシニングセンターの開発にも熟練の技が必要なことは言うまでもない。日本のモノ作りの原点は職人の技、熟練の技にありそうだ。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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