東京総研トップへ

元気な企業(最新)

2010年の記事

 

 

 

日本理化学工業(株)

■働く幸せを日々実感

業種:粉の飛びにくい炭酸カルシウム製チョーク製造
日本理化学工業(株)

「働く」ということは何なのかを考えさせてくれる。日本理化学工業(株)(川崎市高津区:大山隆久社長)はそんな企業だ。創業は昭和12年。隆久社長は3代目になる。体に害のない粉の飛びにくい炭酸カルシウム製チョークの国産化にはじめて成功し創業した。最近では、多く捨てられているホタテの貝殻を原料に一定量混ぜることで、滑らかな書き味と廃棄物の減少を同時に達成させている。

社員は76名。このうち実に57名が知的障害者である。50年前の昭和35年、近くの養護学校の教員が会社を訪ね、現会長である大山泰弘専務(当時)に2名の知的障害者の採用を依頼した。大山専務は採用したい気持ちがあったが、一方、重い責任を負うことになる。悩みに悩んだ末、採用は見送った。しかし、先生は諦めずにやって来る。断る。また来る。3回目の時に「採用がダメなら、せめて働く体験だけでも」とお願いされ、一週間の就業体験を認めた。

この一週間の間、2名は、誰よりも早く会社に出て、休み時間も仕事に没頭した。就業体験が終わる前日、従業員数名が専務を取り囲み、「あの2人を採用してあげて欲しい。自分たちがカバーする。」と言い始めた。一心不乱に働いていた姿に従業員も心を動かされていたのだ。専務は決意した。工場内も字を大きく書き、原材料容器、計量器を色で分けるなど工夫を重ねた。2人の働きぶりを見て、知的障害者の採用は自然と増えていった。今では、工場のラインはほとんど知的障害者が働いている。

彼らが「社会のため、人のために役に立ちたい」と思い、前向きで、しかも最後までやり遂げようとする姿は、健常者を含めた周りの人にも、「自分たちもしっかりしないといけない」という意識にさせている。50年前採用された2名のうち1名、林さんは、66歳になった今も現役で活躍中だ。

粉が全く出ないチョークを作りたいという発想から、5年前には「キッドパス」という新しいチョークタイプのマーカーを開発した。ガラス面やホワイトボードに書いた場合なら簡単に消すことができる上、粉や消しカスは一切出ず、子どもも安心して使える製品だ。知的障害者が懸命に働き、健常者もサポートをする。「働く幸せ」を一人一人が実感している日本理化学工業(株)は海外展開など次の時代に向けて邁進している。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


著作者の承諾を得て掲載しています。無断転載ご遠慮願います。

 

▲ TOP

2010年の記事に戻る