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2011年の記事

 

 

 

 

(有)餡のおおすか

■「取引先との共存共栄の経営貫く」

業種:製餡業
(有)餡のおおすか

地域密着という言葉はまさにこの会社のためにある、ともいえるほど地元の取引先との堅い信頼関係を100年近く維持している企業がある。大正元年創業の(有)餡(あんこ)のおおすか(福島県会津若松市)である。社長の佐瀬順氏は3代目。新たな挑戦を試みているが、長年培った、こうした経営の根幹は決して崩さない。

「会社を継がなくていいよという、父親である前社長の言葉を真に受けて最初は全く畑の違う自動車ディーラーに就職した」―佐瀬社長はこう苦笑する。製餡業の家で育ったとはいえ工場内は危険を伴ったため子供のころは入らせてもらえなかった。就職後しばらくして「帰って来い」という父親の言葉に会社を辞めて実家に戻った時も製餡の知識はゼロに等しかった。「餡は小豆からできている、程度の素人知識しかなかった」と謙遜をまじえていう。

同社長はそれから6年間、朝4時半に工場に出てボイラに火を入れ、小豆を炊くといった下働きを経験した。「自分が納得するまでやらなければ気の済まない性質だった」(同社長)。後年、社長に就任して以降、経営を考える上で不可欠になる工程、生産性、稼働率といった概念がこうした経験を通じて体に浸みついた。

会津地域の製菓屋さんを主な取引先とし、昔は「生餡」を100%近く出荷していたが現在は砂糖を入れる「練り餡」が全体の半分程度に増えている。取引先のレシピや味のイメージなどをもとに日々200種類ほどの練り餡を作り分けている。ただ同社長にとって懸案は営業力の強化だった。このため創業して初めて営業担当を採用し、取引先との信頼関係をさらに深化させようと奮闘中だ。

同社は国の地域資源活用事業の認定を受け、独自の「餡ペースト」を開発した。ただ「最終製品をつくるのは地域のお菓子屋さんに任せ、弊社は2次加工品の供給を行うのが役割」とする。また「会津菓楽堂」と呼ぶサイトを立ち上げ、地域のお菓子屋さんの「隠れた」商品を代行販売する事業も始めた。地元のお菓子が売れれば餡の出荷も増えるという共存共栄の経営だ。自らの立ち位置を見つめ地域の活性化と雇用増にも目を向ける気配りが、地域の信頼を得ているといえる。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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