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元気な企業(最新)

2009年の記事

 

 

 

株式会社塚谷刃物製作所

 

ニッチな分野に特化しシェア拡大

業種:刃物製造
株式会社塚谷刃物製作所

中小企業であってもマーケットシェアの半分以上を占めている企業は意外に多い。これら企業は、独自の技術を持ち、ニッチな分野で活躍しているケースがほとんどだ。業界ではその分野でトップメーカーとして認められ、リーディングカンパニーになっている。中小企業の場合、激しいシェア競争の末にリーディングカンパニーになる大企業とは異なり、得意分野に磨きをかけることでシェア拡大につなげるわけだ。

工業用特殊刃物を手掛ける株式会社塚谷刃物製作所(大阪府八尾市)は大半の製品で圧倒的な国内シェアを確保している。貝ボタン用の円筒刃製造スタートした同社は、段ボールや合成繊維などの普及と歩調を合わせ、製造品目を転換した。創立6年目にはトムソン刃の製造を開始した。紙器や段ボール、塩ビケース、パッキン、シールなどを希望形状に打ち抜きするための刃だ。今では製品アイテムが3000種類にもなるが、同社の推計だと60%近い国内シェアを握っているという。

ビジネスフォーム用の刃は国内シェアだけだと90%にも達するという。コンピュータが普及し始めた昭和36年頃、ビジネスフォーム用紙が普及すると考え、横ミシン刃の製造を始めた。コンピュータで印刷される帳票類にミシン目やパンチ穴を開けるための刃だ。それまで輸入品に頼っていただけに、国産化したことで需要は一気に拡大した。同社が開発したビジネスフォーム用の刃はJIS規格のベースとなったほどだ。

さらに、全売上げの半分近くを占める腐食刃も、国内シェアの45%を持っている。腐食刃は通常、腐食液で金属を溶かして刃先を形成するが、同社は腐食工程のあと機械で刃先加工を行うため、薄いシートの型抜きなどが容易にできる特徴を持っている。現在、「液晶用特殊シート材の加工用刃物」の開発を進めており、実現すれば高いシェアを確保できると見られる。

同社がシェアの半分以上を握っていのは(1)将来を見通す眼を持っている(2)工業用刃物という分野に特化している(3)薄いものを抜くという基本技術を確立した−などの理由が考えられる。「元々は切る・抜くというのはローテク。しかしモノ作りにはなくてはならない」(塚谷俊哉社長)。だからこそ、ローテクの製品をハイテク化するための道を探り、少しでも素晴らしい刃を作ろうと努力してきた。「『会心の切れ味』で時代の新しいニーズを切り取ってゆく」(同)ことがシェアアップの原動力なのだろう。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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