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2008年の記事

 

 

 

 

 

ウチヤ・サーモスタット

 

■モノづくりの原点は「小さな巨人」の集積

業種:サーモスタットメーカー
ウチヤ・サーモスタット


産業界には「小さな巨人」という言葉がある。ごく限られた分野で大きなマーケットシェアを持っていたり、大企業が出来ないような加工を得意としていたり、狭い範囲ではあっても開発力は他社に負けないなどの中小企業がこの中に入ると思われる。モノづくりの原点はこの「小さな巨人」の集積ではないだろうか。わが国にはこうした中小企業が意外に多い。

ウチヤ・サーモスタット株式会社(埼玉県三郷市)も「小さな巨人」にふさわしい企業の一つといえそうだ。社名のとおりサーモスタットの専業メーカーであり、ヘアドライヤー用のサーモスタットだけで年間5000万個以上を生産、世界シェアは60%にも達している。無論、この分野では世界のトップシェアを誇っており「UCHIYAブランド」として世界に浸透している。同社の経営理念は「小さな一流企業を目指す」であり、常に工夫を怠らない。

サーモスタットはON−OFF動作を安定させるため、接点圧力は極力小さくする必要がある。一方で耐衝撃性を高めるには接点圧力を大きくしなければならない。この2つの相反する要素を、様々な工夫によりバイメタルのバネと銅合金可動板バネによる二重構造にすることにより解決した。サーモスタットは動作温度を細かく設定でき、高い耐久性を維持する必要もあるが、これもバイメタルの精密加工法を開発することでクリアした。

同社の製品には多くの工夫が盛り込まれているが、サーモスタットも厳しい競争に晒されており、トップシェアにあぐらをかいてはいられない。同社は常に「新しい分野を探し、新しいものを開発していく必要がある」(打矢正雄社長)と考えている。その一つが、プラズマスプレーを利用したメッキ技術により開発した化学物質などを検知する金属酸化物ナノ粒子構造膜の形成だ。2006年度の戦略的基盤技術高度化支援事業に「プラズマスプレー気相メッキ法による高性能環境センサー生産プロセス開発」が採択されたことから開発が急ピッチで進んだ。開発にはこれまで蓄積されてきた技術やノウハウ、様々な工夫が当然のことながら生かされている。

このプロジェクトが本格的に動き出せば、「小さな一流企業」に新たな勲章が加わるだろう。「小さな巨人」として認められるためには誰も考えが及ばないような工夫をし、それを具現化し、世に送り出し、ユーザーからの高い評価を受けることが必要だ。わが国に「小さな巨人」が増えれば増えるほど、「モノづくり」の層が厚くなることは間違いない。



著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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