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御國ハイヤー事件

(最高裁昭和58年7月15日第二小法廷判決)

 

就業規則である退職金規定の不利益変更につき、代償となる労働条件を何ら提供せず、不利益を是認させるような特別の事情も認められないので、合理性が認められなかった。

 

【事案の概要】

 

タクシー会社であるYの退職金支給規定は、退職金は退職時の基本給月額に勤続年数を乗じて得た金額とする旨定めていたところ、Yは、昭和53年7月31日限りでこの退職金規定を廃止し、同日までの就労期間に対応する退職金は支払うが、同年8月1日以降の就労期間は退職金算定の際の勤続年数に参入しないことに変更して、昭和38年にYに入社し昭和54年10月に退社したXに対し、昭和53年7月31日までの就労期間に対応する退職金のみを支払った。

 

【判決の要旨】

 

原審は、本件退職金支給規定は就業規則としての性格を有しており、右の変更は従業員に対し同年8月1日以降の就労期間が退職金算定の基礎となる勤続年数に算入されなくなるという不利益を一方的に課するものであるにもかかわらず、Yはその代償となる労働条件を何ら提供しておらず、また、右不利益を是認させるような特別の事情も認められないので、右の変更は合理的なものということができないから、Xに対し効力を生じない、と判断した。以上の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。