ボーナス込みで最低賃金クリアー? (2003年11月号より抜粋)  
     
 

ボーナスも含め平均すれば最低賃金をクリアするが違法でしょうか?

 

Q

パート社員の一部について、最低賃金をクリアしていないという指摘があります。当社では、ボーナスの時季にパート社員にも形ばかりの一時金を支払っていますが、それを含めれば、ギリギリで基準を超えます。それでも問題があるでしょうか。

 

 
 

A

労働者を雇い入れる場合、原則として、法律で定める最低賃金以上の賃金
を支払わないといけません。最低賃金以下の水準で契約しても無効で、「最低賃金と同様の定めをしたものとみなす」という扱いになります(最低賃金法第3条第2項)。パートももちろん労働者ですから、最低賃金法の適用を受けます。

そうはいっても、労働能力が著しく低い労働者もいます。この場合、最低賃金以下で賃金を定めることができますが、都道府県労働局長の許可を受ける必要があります。

対象になるのは、次の五種類の労働者ですが、許可を得るのは相当に難しいと考えるべきです。

・精神、身体の障害により著しく労働能力の低い者

・試用期間中の者

・職業訓練を受ける者のうち一定のもの

・所定労働時間の特に短い者

・断続的労働に従事する者

たとえ、身体に障害があっても、「障害により著しく労働能力が低い」という条件に合致しなければ、許可は出ません。ですから、通常のパートさんには、最低賃金以上の賃金を支払う必要があります。

最低賃金の基準を満たしているか否かを計算するとき、従業員に支払う賃金の全額が対象になるわけではありません。

・臨時に支払われる賃金(結婚手当等)

・1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス等)

・所定時間外労働、所定休日労働および深夜労働に支払われる賃金(割増賃金等)

・その他、最低賃金において算入しないことを定める賃金

この4つは、計算から除外します。最後の「その他」の賃金としては、現在、地域別最低賃金、産業別最低賃金ともに、「精皆勤手当」「通勤手当」「家族手当」の3つを上げています。

ですから、ボーナスを含めて時給にならせば、最低賃金の基準をクリアするといっても、法違反に変わりはありません。残業等で受け取る賃金額が増えても、それは考慮されません。

従来、最低賃金は、日額と時間額の2つが定められていました。しかし、平成14年度から、時間給表示一本に統一されました。最低賃金が700円だとすると、1日6時間労働のパートには、通勤手当等を除いて最低4,200円を支払わないといけません。

貴社が基準を満たさないのなら、ボーナス時の一時金を廃止して、時給水準を高める等の対応が必要になります。時給を高め、かつパートの実労働時間が法定労働時間を超えれば、当然、割増賃金の支払額も大きくなりますが、それは仕方のないことです。

 

 
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