判例 派遣終了は合理的理由に該当 (2004年5月号より抜粋)  
   

 

 
 

雇止めも止むを得ず

改正派遣法の施行に合わせるかのように、派遣社員の身分を巡る重要判例が出されました。訴えた労働者は、専門26業務型の派遣社員として、同一職場で13年間も働いていました。派遣契約の終了により、当人は職場を失いましたが、裁判所は多々問題点を指摘しつつも、原則的に雇止めは有効と認めました。

松山地方裁判所(平15・5・22判決)


派遣期間の上限が延長され、今後、同じ派遣先企業で長期間就労する労働者が増えると予想されます。

本事件では、結果的には、雇止めが有効と判断されましたが、会社側にも反省すべき点が少なくありませんでした。読者の皆さんは、本事案を反面教師として、裁判所が指摘した問題点を学んでください。

訴えた労働者は、専門26業務のうち、事務用機器操作に該当する派遣労働者です。契約期間は6ヵ月でしたが、契約の反復更新を繰り返し、13年余も同じ職場で働いていました。しかし、派遣先が契約を打ち切ったため、派遣元会社との雇用契約も終了してしまいました。

労働者は、派遣先・派遣元双方を相手方として、地位確認、慰謝料支払い等を求める訴訟を起こしました。

本事件は、改正派遣法施行前の法律関係を前提とするものですが、一番大きな違いは派遣期間の制限です。法改正以前、「事務用機器の操作」等の専門26業務(一部除く)に関しては、行政指導で、同一労働者について、1年契約を2回まで更新することが認められていました。

逆にいうと、同じ職場では最高3年までしか、同一労働者を使い続けることはできなかったのです。

今年3月以降は、最高3年契約を何回でも更新できるようになりました。つまり、訴えを起こした労働者が、同一職場で13年余も働いていたのは、指導に反していたのです。

行政が3年以上の就労を認めていなかった点は、「本人が雇用継続を期待する合理的な期待がない」、つまり雇い止めは有効だという判断が下される重要な要因になりました。

しかし、判決文のなかには、改正法施行後も通用する部分があります。「派遣契約は、企業間の商取引であって、更新の期待等を観念することができない。派遣契約が終了したという事実は、派遣労働者の雇用契約が終了となってもやむを得ない合理的な理由に当たる」と述べる部分です。

原則的にいうと、派遣先が契約終了を宣言すれば、派遣元も派遣労働者を雇止めして差し支えないという結論になります。ただし、裁判所は、「派遣先が契約締結時に履歴書提出等を求めている」「派遣対象業務以外も担当させている」「3年を超えて契約更新している」など、派遣のルール違反があった点を指摘しています。

こうした事実があれば、派遣契約は有名無実のものとみなされ、派遣先と派遣労働者間に黙示の労働契約があったと推認される可能性が高まるので、実務上、注意が必要です。

 

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