判例 コース別雇用管理と男女差別 (2004年6月号より抜粋)  
   

 

 
 

慰謝料の請求容認 改正均等法に違反

コース別雇用管理を実施しているからといって、会社が必ず敗訴するわけではありません。運用面で男女差別の弊害が顕著に現れている場合に限り、違法性が問題になります。本事件で、裁判所は、実態として性別に基づく雇用管理が行われていたと認定し、女性への慰謝料支払いを命じました。

東京地方裁判所(平14・2・20判決)


訴えを起こした女性社員は12人。高卒で、一般職として入社しました。同期同学歴の男性社員は総合職として入社後、13年次に課長代理に昇格しています。

自分たちも課長代理に昇格しないのはおかしいと主張し、昇格した場合の賃金、一時金等との差額、慰謝料等を請求しました。

裁判所は、「改正均等法が施行された平成11年4月以降について、男女のコース別の処遇を維持し、男性を総合職掌に位置付け、女性のほとんどを一般職掌に位置付けていることは、配置および昇進について女性であることを理由として、男性と差別的取扱いをするものであり、均等法第六条に違反するとともに、公序に反して違法である」と述べました。

会社は、お決まりのパターンで、コース別管理は「職種の違いに基づくもの」と主張していました。しかし、「当時の社会情勢を踏まえた企業としての効率的な労務管理を行うため、女性社員については、主に処理の困難度の低い業務に従事する者として処遇し、また勤務地を限定することとしたものというべきであり、社員の採用に当たっても、このように男女で異なった処遇をすることを予定していたことから、男女別に異なった募集、採用方法を取っていたもの」と事実認定されています。

女性側の言い分がおおむね通った形ですが、だからといって差額全額の支払いが命じられたわけではありません。

配置、研修、職務の割り振り、転勤等、すべての面で男女別管理がなされていたという事実そのものが、賃金格差を正当化する理由になります。「入社後の経験・能力開発の違いにより、昇給スピードに差が出た」という理屈づけが可能となるからです。

このため、「女性と比較対象男性との賃金格差分が、そのまま女性たちの損害額であるとすることはできず、具体的損害額を確定することは困難である」という結論になります。

結局、「会社のした男女差別の態様、平成11年4月以降の賃金格差、女性らの有する外務員資格の種別、その他の事情」を総合考慮して、慰謝料として350万円〜490万円を支払うのが相当という判決となりました。

改正均等法施行後、積年にわたる賃金格差をまとめて請求する形の紛争が増えています。しかし、その大部分は、賃金格差のうち、一部は不当な男女差別に基づくもの、他はコース別管理の結果としての知識・経験の差によるもの、という2分法で解決できそうです。ただし、今後も、男女で能力差がつくようなコース別管理を続けることは、もちろん許されません。

 

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