フレックスタイム制と深夜残業(2005年3月号より抜粋)  
     
 

フレックス勤務で深夜労働が多く発生したが割増賃金の扱いどうなるか

 

Q

フレックスタイム制の職場で急な受注があり、従業員の頑張りで何とか顧客の要望に応えました。その際、深夜労働が多量に発生しました。フレックスタイム制の場合も、深夜労働に対しては、5割(時間外2割5分、深夜2割5分)の割増賃金を払うという処理でよいのでしょうか。

 

 
 

A

深夜分の25%だけを支払う

フレックスタイム制は、始業・終業の時刻を従業員の自主決定にゆだねる仕組みです。全員の出勤を義務付けるコアタイムを設定することはできますが、コアタイム以外の時間について労働の強制はできません。

自らの判断に基づき出勤するように要請することはできますが、それに応じないからといって原則として懲戒はできません。お尋ねのケースでは、急ぎの仕事が入ったことを担当者が理解し、「自主的」に深夜労働に従事したと思われます。

フレックスタイム制では、出勤の強制ができない代わり、1日8時間、1週40時間を超えて労働しても、ただちに時間外とはなりません。

1ヶ月(清算期間)を通算して、法定の労働時間を超えた場合、はじめて時間外労働が発生します。法定の労働時間は、次の算式に従って算定します。

40時間×月の暦日数÷7日

フレックスタイム制といっても、休憩、休日、深夜労働に関する規定は適用されます。夜10時から翌朝5時までの深夜の時間帯に労働した場合には、2割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。

フレックスタイム制では、コアタイムのほかに、フレキシブルタイムを定めることもできます。フレキシブルタイムとは、従業員が働くか否かを自由に決定できる時間帯です。始業・終業の時刻を自主的に定めることができるといっても、基本的にフレキシブルタイムを超えて労働することは許されません。

24時間いつでも働けるという体制を取ると、安全や施設管理の面で問題が生じます。このため、フレキシブルタイムを設けて、働くことのできる時間帯を制限する会社が少なくありません。

貴社でも、深夜労働は例外中の例外という措置だったのでしょう。この場合の割増賃金の支払い方ですが、深夜労働分がすべて単純に5割増しになるわけではありません。

まず、深夜に働いた分も通常の労働分に加算し、1ヵ月の総労働時間を算出します。その総計が1カ月の法定労働時間を上回っていれば、その分が時間外となるので、125%の割増賃金を支払います。集中的に深夜労働に従事しても、それ以外の日の労働時間を自主的に減らせば、時間外が発生しないこともあり得ます。

深夜労働の分には、25%増しの賃金だけを払います。100%部分については、1ヵ月の総労働時間に加算することによって、すでに支払われているので、改めて加算する必要はありません。

 

 
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