全額固定の賞与と平均賃金 (2006年1月号より抜粋)  
     
 

パートの「お餅代」も平均賃金算定の基礎の中に含まれるのか?

 

Q

夏冬2回支給する賞与でも、「その金額があらかじめ確定している」場合には、賞与に該当せず、平均賃金算定の基礎になるという話を聞きました。当社では、パートに夏冬定額で5万円のボーナスを払っています。これも金額が確定しているので、休業手当等を計算する場合には、平均賃金算定の基礎に含まれますか。

 

 
 

A

平均賃金を算定する際、「3ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金は参入しない」(労働基準法法第12条第4項)定めとなっています。賞与を除外するのは、この規定を根拠とします。

しかし、夏冬2回支払う金銭がすべて賞与に該当するかといえば、そうとは限りません。「定期的に支給されかつその支給額が確定しているものは、名称のいかんにかかわらず、これを賞与とみなさない」(昭22・9・13基発第17号)という解釈例規があります。

実務上、問題になるのは、いわゆる「年俸制」の場合です。年俸は1年トータルでいくら払うと決めるのが原則です。しかし、従来の習慣を踏襲し、支払いに関しては夏冬に重点配分するという会社も少なくありません。

就業規則上、「給与は年俸制により定める。決定された年俸の17分の1を、月例給与として支給する。決定された年俸の17分の5を二分して、6月と12月に賞与として支給する」という規定があるケースで、解釈例規(平12・3・8基収第78号)は、「予め年俸額が確定している年俸制における平均賃金の算定については、賞与部分を含めた年俸額の12分の1を1ヵ月の賃金とする」と述べています。

ですから、事業主都合で休業が生じた場合の休業手当(労働基準法第26条)、業務上災害が起きた場合の休業補償(同第76条)等を算出する際には、賞与払い分を含めて計算しないと違法になります。

それでは、夏冬2回、パートに「定額」でボーナスを払っていると、それも平均賃金算定の基礎に含める必要があるのでしょうか。世間常識からいうと、ちょっと首を傾げざるを得ません。この問題は、最終的に、「定期釣に支給されかつその支給額が確定している一という文言をどう解釈するかにかかってきます。

一般従業員のボーナスは、労働者の勤務成績等に応じて、都度、支給額が決定されているとします。パートについては、計算上の便宜から細かい査定を省き、暫定的に定額で支給額を定めている場合には、一般社員も含め全体として「勤務成績等に応じて金額が決定される」と解釈する余地があります。「夏冬2回、5万円を支給する。ただし、会社業績によっては支給しないこともある」等のただし書きがあれば、「支給が確定していない」事実を証明する要素となるでしょう。「支給日現在、在籍していない者には支給しない」等の規定がある場合も同様です。

こうした運用が暗黙のルール化されていても、明文化しておくのがよろしいでしょう。

 
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