パートからの契約打ち切り理由証明の要求 (2006年6月号より抜粋)  
     
 

契約打ち切りのパートから理由証明の要求があったが応諾義務は?

 

Q

業務量の減少に伴い、数年間、雇用していたパート社員を雇止めしたところ、本人が納得しません。「雇止めの理由を書面にしてほしい」というので、「期間満了による」と記載した文書を渡しましたが、さらに具体釣な理由を示すよう要求しています。会社として、応じる義務があるのでしょうか。

 

 
 
 

遅滞なく交付するべき

雇用関係を打ち切った場合、会社は一定範囲内で理由を証明する書面を交付する義務を負います。よく知られているのは、労基法第22条の「退職時証明」でしょう。同条第1項では、「労働者が、退職の場合において、(略)退職の事由(退職の事由が解雇である場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」と定めています。

さらに、平成16年1月施行の改正労働基準法では、会社が解雇予告した場合、従業員は退職前に「解雇理由証明書」を請求できるという規定(同条第2項)を新たに創設しました。

しかし、パートの雇止めについては、これらとは別の規定が適用されます。労働基準法第14条(契約期間等)第2項を根拠規定として、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15年厚生労働省告示第357号)が定められています。

告示第2条では、1年を超えて継続勤務している有期契約社員を雇止めしようとするときは、30日前に予告するよう義務付けています。

第3条では、予告がなされたとき、あるいは雇止めがなされた後で、パート社員等が請求した場合、「使用者は、更新しない(しなかった)理由の証明書を遅滞なく交付しなければならない」と規定しています。

お尋ねのケースでは、数年間雇用していたパートを雇止めするのですから、この「雇止めの理由の明示」の対象になります。

貴社では「雇用期間の満了による」という書面を提出されたとのことですが、確かに、労基法第22条に基づく退職証明書のモデルフォームをみると「契約期間の満了による退職」という項目が存在します。

しかし、告示による「雇止め理由の明示」の場合、行政解釈(平15・10・22基発第1022001号)では、「更新しない(しなかった)理由については、契約期間の満了とは別の理由を明示することを要する」と述べています。具体例としては、次の6つが挙げられています。

  1. 前回更新時に、次の更新はないと合意していたため

  2. 更新回数の上限に達したため

  3. 担当業務が終了・中止したため

  4. 事業縮小のため

  5. 業務遂行能力が不十分なため

  6. 違反行為・勤務不良のため

ですから、貴社の場合も、「担当業務の終了」「事業縮小」など、具体的な理由を記載した証明書を交付しなければなりません。

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