退職後任意継続被保険者になるべきか (2006年6月号より抜粋)  
     
 

病気退職のとき健康保険の任意継続の手続きは取らない方が有利?

 

Q

当社では、通常、退職者には任意継続被保険者の手続きを取るよう勧めています。しかし、病気が理由で退職する場合、国民健康保険に切り替える方が有利という話を小耳に挟みました。何を基準に選択すればよいのか、分かりやすく説明してください。

 

 
 

A

前年度の所得などによりケースバイケース

(1)保険料について

保険料を安く抑えようとすれば国民健康保険の保険料と任意継続被保険者を選択した時の保険料を比較する必要があります。

  • 国民健康保険の保険料は、前年の収入等をベースに算定されます。お住まいの市町村に昨年度の年収を言えばおおよその保険料を問い合わせることが可能です。
  • 任意継続被保険者の標準報酬月額は、「資格喪失時の金額」か「28万円」(政管健保の場合)のいずれか低い方で決められます(健保法第47条)。任意継続被保険者の場合は、全額負担となりますのでご注意ください。(勤めているときは会社との折半負担)

(2)引き続き傷病手当金を受ける場合

病気が理由で退職し、引き続き傷病手当金を受けるケースでは、給付面も含め、総合的に得失を検討する必要があります。任意継続被保険者には傷病手当金は支給されません。ただし、資格喪失日の前日まで継続して1年の被保険者期間があれば、「資格喪失後の継続給付」として傷病手当金を受けることができます。

一方、任意継続被保険者の手続きを取らず、国民健康保険の被保険者になったとしても、資格喪失日の前日まで継続して1年の被保険者期間があれば、「資格喪失後の継続給付」として傷病手当金を受けることができます。

傷病手当金の観点からは特に双方のメリット・デメリットはありません。

(3)保険料が逆転した場合

退職後、保険料が有利ということで、任意継続を選択したとします。退職1年目に所得が低下したので退職2年目の国民健康保険の保険料のほうが安くなる場合があります。その場合、国民健康保険に入りたいことを理由に任意継続被保険者をやめることができないことに注意が必要です。任意継続被保険者の資格喪失要件は以下に限定されています。

  1. 任意継続被保険者となった日から2年を経過したとき。(被保険者証に表示されている予定年月日)
  2. 保険料を納付期日までに納付しなかったとき。(納付期日の翌日)
  3. 就職して、健康保険、船員保険、共済組合などの被保険者資格を取得したとき。(被保険者資格を取得した日)
  4. 後期高齢者医療の被保険者資格を取得したとき。 (被保険者資格を取得した日)
  5. 被保険者が死亡したとき。(死亡した日の翌日) 

2番目の保険料滞納要件を使えば資格を喪失することはできますが、ほめられたものではありません。

任意継続被保険者となるか、国民健康保険に加入するか、双方のメリット・デメリットをよく考えて選択してください。

 

 
  労務相談と判例> 健康保険の相談

Copyright (C) 2006-2017 Tokyo Soken. All Rights Reserved

東京労務管理総合研究所