1年単位の変形労働時間制の休日の振替 (2008年1月号より抜粋)  
     
 

1年変形制のスケジュールを休日の振替で崩すことが許されますか?

 

Q

当社では、1年単位の変形労働時間制を課用していますが、一般の事業場と同じように、必要に応じて休日の振替を実施してきました。しかし、一部の従業員から、「1年単位変形労働時間制の場合、年間カレンダーを固定するのだから、振替は許されないのではないか一」という疑問が寄せられました。当社のやり方に、問題がありますか。

 

 
 
A

連続労働日の限度に注意すれば可能

1年単位の変形労働時間制については、「労働日及び労働日ごとの労働時間を具体的に定めることを要し、業務の都合によって任意に変更するような制度はこれに該当しない」(平6,1.4基発第1号)という解釈例規が示されています。従業員の方は、休日の振替は「具体的に定めた労働日を任意に変更する」措置なので、許されないと考えておられるのでしょう。

しかし、通常の労働時間制度では、就業規則に根拠規定を置くことにより、休日振替自体は可能とされています(昭23.4.9基収第1397号)。1年単位の変形労働時間制だからといって、一律、休日振替を禁じるべきという結論にはなりません。

このため、1年単位の変形労働時間制の趣旨を損なわない範囲肉で、休日の振替を認める解釈例規が出されています(平11.3.31基発第168号)。

まず、通常の労働時間制度でも、自由勝手に振替が許されるわけではなく、「4週4日の休日が確保されるもの」(昭和22.11.27基発第401号)とする必要があります。これは、休日の与え方について、労働基準法第35条第2項により、1週1日のほか4週4日というスタイルも認めているからです。

一方、1年単位の変形労働時間制については、労働基準法施行規則第12条の4第5項で、「連続して労働させる日数の限度は6日、ただし、特定期間として定められた期間における連続して労働させる日数の限度は1週間に1日の休日が確保できる日数とする」と定められています。この原則を守る限り、4週4日の変形休日制を採る余地はないという結論になります。

このため、1年変形労働時間制に関する休日振替の要件は、次のように定められました。

  1. 就業規則に根拠規定を設け、これによってあらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えるものであること。
  2. 対象期間(特定期間を除く)においては連続労働日数が6日以内となること。
  3. 特定期間においては1週間に1日の休日が確保できる範囲内であること。

「1週間に1日の休日が確保できる」とは、たとえば、日曜日に休日を与えたら、翌週の土曜日には次の休日を設定する必要がある(つまり、連続労働日数12日)という意味です。

ですから、特定期間以外の週に、あらかじめ1日の休日しか設けていなかった場合等には、振替規定があっても翌週への振替は不可という結論になります。休日の設定の仕方をみて、振替の可否を判断してください。

 

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