通勤の逸脱・中断と家族の介護 (2008年7月号より抜粋)  
     
 

介護が通勤災害の保護対象に追加されたとはどういう意味ですか?

 

Q

労災保険の仕組みが変わって、「家族の介護も保護の対象に含まれる」というニュースを目にしました。通勤災害が関連する内容だったように記憶します。老親等の世話と労災保険と、あまり関係ない気がしますが、どういう意味でしょうか。

 

 
 

A

日常生活上必要な行為と解釈される

平成20年4月1日から、労災保険法施行規則の一部が改正されています。これまで施行規則第8条では、「日常生活上必要な行為」として次の4種類の行為を列挙していました。

  1. 日用品の購入等
  2. 職業訓練等
  3. 選挙権の行使等
  4. 病院の診察・治療等

しかし、4月以降は「要介護状態にある配偶者、子、父母、配偶者の父母並びに同居し、かつ、扶養している孫、祖父母及び兄弟姉妹の介護」が追加されました。

条文だけ読んでも、よく意味が分からないと思います。この規定は、ご指摘のとおり、通勤災害制度と関係があります。

通勤途上の災害を「通勤災害」と呼びますが、通勤経路から逸脱したり、通勤を中断したり(※注)すると、その後、再び通勤経路に戻っても、保護の対象になりません。

行政解釈(平18・3・31基発第0331042号)では、「途中で麻雀を行う場合、映画館に入る場合、バー、キャバレー等で飲酒する場合、デートのため長時間にわたってベンチで話し込んだり、経路から外れた場合」を例示しています。

ちょっとでも逸脱・中断があれば、すべて通災制度の救済を受けられないわけではなく、それが「日常生活上必要な行為をやむを得ない事由により行うため」(労災保険法第7条第3項)であれば、経路復帰後の災害は通勤災害と認められます。上述の施行規則第8条は、この「日常生活上必要な行為」を具体的に定めたものです。ですから、今回の改正により、家族介護のために逸脱・中断があっても、通災として保険給付を受けることが可能になったわけです。

(※注)

  • 逸脱…通勤途中で、終業または通勤とは関係のない目的で合理的な経路からそれること。
  • 中断…通勤の経路上で、通勤とは関係のない行為を行うこと

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