労災保険と遺族厚生年金の併給調整 (2009年5月号より抜粋)  
     
 

賃金が高い労働者が死亡したとき労災保険だけ受給した方が得?

 

Q

従業員が業務上災害で亡くなったとき、労災保険と厚生年金の両方から年金を受け取れますが、労災保険が減額調整されると聞きます。場合によっては、厚生年金を申請せず、労災保険だけ受け取った方が得になるケースもあるのではないか。損得を、どのように判断したらよいでしょうか。

 

 
 
A

併給しても遺族補償給付の金額は最低でも補償される

家族を業務上の災害で失った壕合、遺族には労災保険から遺族補償年金が支給されます。一方、厚生年金・国民年金の遺族厚生年金・遺族基礎年金の受給権も得られます。

ただし、この場合、遺族厚生年金・基礎年金は満額受け取れますが、遺族補償年金が減額されます。減額率は、次のとおりです(労災保険法施行令第二条、第四条)。

  • 遺族厚生年金・基礎年金をともに受給できるとき…0.80

  • 遺族厚生年金のみのとき…0.84

労災保険と厚生年金では補償の手厚さが違い、労災保険の方がずっと高額ですが、このレベルの減額なら、通常は、2つの年金の合計額(労災保険の調整後)が労災保険単独の額を上回るでしょう。

しかし、労災保険は死亡時の賃金水準(給付基礎日額)を算定ベースとするのに対し、厚生年金は被保険者期間全体の報酬水準(被保険者期間300月の最低保障あり)をベースとするので、両者の比率は人によって大きく異なります。

「もしかすると、労災保険単独の方が得ではないか、そういう不安を拭い去れません。この点については、「労災保険に調整率を乗じた額が、労災保険単独の額から厚生年金(基礎年金)の額を減じた額を下回るときは、足りない分を補填する」という趣旨のただし書きが付いています(労災保険法別表第1)。

ですから、調整後の労災保険と厚生年金(基礎年金)の合計額が労災保険単独の額を下回ることはあり得ません。最低でも、同額となります。

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