精皆勤手当と割り増し賃金 (2009年10月号より抜粋)  
     
 

毎月金額が変動する精皆勤手当を割り増し賃金算定の基礎に含めるべきか

 

Q

これまで精皆勤手当を除いて時間外割増の金額を計算していましたが、法律的には問題があると聞いて驚いています。実務的にいえば、手当の有無により、毎月、算定基礎の金額か変動するので大変面倒です。算入せずに済ませられないでしょうか。

 

 
 
A

毎月支払いなら算定基礎から除外不可

平成22年4月からは、60時間超の残業に5割の割増賃金支払を義務付ける改正労働基準法が施行されます(中小企業は3年程度適用を猶予)。割増賃金の計算方法に誤りがないか、改めてチェックするよい機会です。

割増賃金の基礎となる賃金から除外できるのは、次の7種類の賃金項目です(労基法第37条、労基則第21条)。

  1. 家族手当

  2. 通勤手当

  3. 別居手当

  4. 子女教育手当

  5. 住宅手当

  6. 臨時に支払われた賃金

  7. 1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金

これらの手当は「制限列挙」で、「これらに該当しない通常の労働時間または労働日の賃金はすべて算入しなければならない」(労基法コンメンタール)と解されています。

精皆勤手当を算定基礎から除外するためには、このどれかの賃金項目に該当するという理屈付けが必要です。可能性がありそうなのは、7.しか見当たりません。今まで毎月支払っていた精皆勤手当を2月に1度支払う形に変え、7.に該当すると主張するわけです。

しかし、単に支払い方法を変更するだけでは、問題を回避できません。そもそも、2力月に1回支払う精皆勤手当などというものが認められるのでしょうか。認知度は低いですが、実は労基法上に「そのもの'ズバリ」の文言が存在します。毎月払いの原則(労基法第24条第2項)が適用されない賃金として、「臨時に支払われる賃金」「賞与」のほか、次の3種類が定められています(労基則第8条)。

  1. 1ヵ月を超える期間の出勤成績によって支給される手当

  2. 1ヵ月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当

  3. 1ヵ月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給または能率手当

ですから、「隔月払いの精皆勤手当」があり得ないとまではいえません。しかし、「単に毎月払いを回避する目的で精勤手当と名づけているもの等はこれに該当しないことはもちろんである」(労基法コンメンタール)と解されています。「1ヵ月以内の期間では勤務成績を判定するのに短期に過ぎる等の特別の事情」が必要となります。

割増賃金の除外賃金項目についても、同様に解釈されるべきでしょう。これまで毎月支払っていた精皆勤手当を2ヵ月に1回の支払に変更するためには、それを正当化するだけの特別の事情がなければいけません。単に支払回数を変えただけであれば、算定基礎からの除外は認められません。

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