判例 退職金制度を中退共へ移行 (2009年12月号より抜粋)  
   

 

 
 

旧退職金規定は失効 差額の請求権は無い 

退職金の支払原資として、社内留保と社外年金制度等の積立金の2種類があります。本事件で訴えを起こした元従業員は、旧社内退職金規定の計算額から中退共の金額を差し引いた残額支払を求めました。裁判所は、現在は中退共の規定のみが有効と判断し、差額の請求を退けましたが、規定整備の大切さを教えてくれる判例といえます。

E社事件 前橋地方裁判所(平21.3・5判決)


退職金は、1回の支出額が大きいので、社内留保だけを当てにするのは危険です。社外の年金制度等にお金を積み立て、支出の平準化を図る企業が少なくありません。

人員構成の高齢化が進み「退職金倒産」の危険を抱える企業が増えたこと、税法改正で従来の「退職給与引当金」制度が廃止されたこと等も手伝って、退職金制度(および支払原資)のあり方を見直す動きが進んでいます。

社外の年金制度を利用する場合、従来の退職金規定をそのまま残し、お金の出所だけを社内から社外に変更するというケースも少なくありません。

本事件の被告会社も、従来、「退職金規定に基づく金額を退職金として支払う。この規定による支給を確実にするため、中小企業退職金共済事業団(中退共)と契約を締結し、事業団から支給される退職金が本規定による額に達しない場合は、その差額を支給する」と規定していました。

しかし、その後、実態としては中退共一本による支給方式に移行していました。給与規定も、「会社は原則として中退共に勤続3年以上の社員を加入せしめ、社員退職にはその規定に基づいて退職金を規定する」という文言を用いていました。

ところが、退職した従業員3人が「従前の退職金規定の効力は存続している」と主張して、訴訟を起こしました。効力が存続していれば、会社は「退職金規定に基づく金額と、中退共の金額の差額を支給する義務を負う」ことになります。

裁判所は、「(1)会社は改正した給与規定を労働基準監督署に届出ている」、「(2)届出には、当時の労組執行委員長の『特別意見はない』という意見書が添付されていた」、「(3)中退共の支給金額が関東地区トラック協会等の公表している基準金額に達しない場合には差額が補填されていたが、旧退職金規定に即して再計算をするよう申し入れた例はなかった」等の事実に基づき、改正給与規定の届出以降、旧退職金規定に効力はないと判示しました。

最終的に会社主張が認められましたが、制度移行に際して、どの規定が存続し、どの規定が廃止されるのか、明確に定める手続きを怠っていた点が、トラブルの原因として指摘できます。会社の役員ですら、その当たりの経緯をよく把握していなかったという事情も見受けられます。もって他山の石とすべきでしょう。

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