賃金の直接払い (2011年9月号より抜粋)  
     
 

従業員の「知人」から賃金の代理受領の申出があったが応じるべきか?

 

Q

若手従業員が、ある日を境に、出勤しなくなりました。電話、メールともに、連絡が取れません。不審に思っていると、知人と名乗る人間が現れて、「委任状をもっているので、自分に賃金を払ってほしい」といいます。どのように対応すべきでしょうか。

 

 
 
A

賃金の代理受領の委任は無効。拒否するべき。

賃金の支払いには、次の5原則が適用されます(労働基準法第24条)。

  1. 通貨払
  2. 直接払
  3. 全額払
  4. 毎月払
  5. 一定期日払

このうち、直接払とは、「労働者本人に直接支払う」という意味です。使用者が、労働者に現金を手渡すのが本来のパターンです。金銭等の債権取り立てを他人に委任するのは、一般的には法律で認められています。受任者は、「受け取った金銭その他のものを委任者に引き渡す」義務を負います(民法第646条)。

しかし、労働基準法では、労働者本人以外への賃金支払いを禁止しています。解釈例規では、「労働者の親権者その他の法定代理人に支払うこと、労働者の委任を受けた任意代理人に支払うことは、いずれも労基法第24条違反となり、労働者が第三者に賃金受領権限を与えようとする委任、代理等の法律行為は、無効である」(昭63・3・14基発第150号)と述べています。

ですから、キチンとした形式の委任状を持った人間が現れても、委任行為自体が無効なのですから、賃金の支払いを拒否できます。

直接払に違反すると、30万円以下の罰金に処せられます。本人が現れた際に二重に賃金を支払えば、罰則は免れますが、そんなバカバカしい対応をする事業主はいないでしょう。

直接払いの例外に、「使者への支払い」があります。妻子等については本人に支払うのと同様の効果を生じるので、差し支えないとされています。しかし、「知人」というだけでは使者とは認められないでしょう。

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