国民年金の未納と年金確保支援法 (2012年10月号より抜粋)  
     
 

国民年金保険料の追納を認める新制度はこれまでとどこが違うのでしょうか?

 

Q

平成24年10月から、年金確保支援法に基づき、10年さかのぼって保険料の追納が可能になるというお知らせをみました。しかし、以前から年金の追納は可能だったように思います。今回の法整備により、何が変わったのでしょうか。

 

 
 

未納者に救済の機会を与える

年金確保支援法は、平成23年8月10日に公布されました。第3号被保険者の「届出忘れ年金」に関する救済措置は、同日から施行されています。お尋ねにある保険料の追納に関する規定は、平成24年10月1日から適用されます。

国民年金の被保険者が保険料を納めていないとき、2とおりのケースが想定されます。第1は、単純な未納です。第2は、保険料の法定・申請免除です。両者の法的効果は、全く異なります。

未納の場合、法律の本則(国民年金法第102条第4項)によれば、「保険料を徴収し、還付を受ける権利は、2年を経過したときは、時効によって消滅する」と規定されています。2年が経過すれば、本人が納めたいといっても、国は保険料の徴収を認めません。

老齢基礎年金は、原則として、保険料納付済期間と保険料免除期間(および合算期間)の合計が25年以上ないと受給できません。未納期間が長くなると、将来的に25年の資格期間を満たすことができなくなります。

一方、適法に免除を受けた期間は、資格期間に算入可能です。保険料を納めていない(全額免除、部分免除)と、受け取る年金額が少なくなりますが、年金の受給権に影響は及びません。

保険料の免除には、次のような種類があります。

  1. 法定免除…障害等級2級以上など一定の要件に該当する人
  2. 申請免除…所得が低いこと、災害等により保険料の納付が困難な人
  3. 学生納付特例制度…20歳以上の学生で、本人の所得状況により保険料の納付が困難な人
  4. 若年者納付猶予制度…平成17年4月〜平成27年6月に30歳に達する日の属する月の前月までの第1号被保険者期間があり、本人・配偶者の所得状況により保険料の納付が困難な人

1.2.については、たとえ全額免除を受けていても、保険料免除期間は保険料納付済期間の2分の1相当の年金が支払われます。これに対し、3.4.関しては、免除期間分は年金額に一切反映されません。

免除の承認を受けた期間は、10年以内の期間に限って追納が認められます(国民年金法第94条)。追納すれば、金額面での不利益は消失します。

今回の年金確保支援法は、免除の対象者ではなく、未納者についても、平成24年10月から3年間、過去10年分の保険料納付を認めるものです。未納の解消は、年金額だけでなく、受給権そのものに影響が及びます。心配な人は、年金事務所に相談に行くようアドバイスされるといいでしょう。

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