監査役兼務の労働者と雇用保険 (2013年5月号より抜粋)  
     
 

監査役兼務の労働者は雇用保険に加入できないというのは本当?

 

Q

当社は小規模企業で、社長以外は雇用保険の被保険者として処理しています。先日、「兼務役員は労働者性があるので保険加入できるが、監査役は認められない」という話を聞きました。被保険者になれないとすれば、「監査役のなり手がいない」という事態も考えられますが、他社ではどのように処理しているのでしょうか。

 

 
 
A

名目的兼務なら被保険者資格あり

雇用保険では、「被保険者とは適用事業に雇用される労働者であって、適用除外の対象者以外をいう」と定義しています(第4条)。適用除外の要件(週20時間未満、雇用見込み期間31日未満など)に該当しなくても、「雇用される労働者」でなければ被保険者になれません。

会社法では、「株式会社と役員および会計監査人との関係は、委任に関する規定に従う」と規定しています(第330条)。雇用(民法第623条)と委任(同第643条)は、別の概念です。一般論でいえば、役員・監査役は「雇用される労働者」に該当しません。

しかし、実態として、ほとんど従業員と変わらない状態で肩書きだけ役員となっているような人は、「万が一、職を失ったら、失業給付を受けられるように、雇用保険の被保険者資格を保持しておきたい」と考えます。

このため、実務上は、「取締役であって、同時に会社の部長、支店長、工場長等従業員としての身分を有する者は、報酬支払等の面からみて、労働者的性格の強い者であって、雇用関係があると認められる」場合には、雇用保険の被保険者として取り扱うとしています。

ただし、代表取締役に限っては、例外は認められません。

監査役については、会社法第335条第2項で「従業員との兼職禁止」を規定しています。ですから、「監査役も被保険者になれない」と誤解する人もいます。

しかし、「名目的に監査役に就任しているに過ぎず、常態的に従業員として会社との間に明確な雇用関係がある」場合には、被保険者資格を取得できます。

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