任意継続被保険者の健康保険料 (2013年8月号より抜粋)  
     
 

任意継続の手続き取った元従業員から健保保険料の計算で質問受げる

 

Q

退職する従業員に対しては、基本的に健康保険の任意継続被保険者の手続きを勧めています。このほど、退職者より連絡があり、「退職前の保険料の2倍になるという話だったが、計算が合わない。以前の保険料に誤りがあるのでは」といっています。金額の差はわずかですが、当方の説明に不十分な点があったのでしょうか。

 

 
 

2倍に増えるとは限らない

健保の被保険者は、基本的に事業所に使用されなくなった場合、その翌日(新しい健保資格を取得したときは、使用されなくなった日)に資格を喪失します(健康保険法第36条)。ただし、喪失の日の前日まで継続して2ヵ月以上被保険者であった人は、申出により任意継続被保険者になることができます。

以前は、健保の任意継続被保険者と国民健康保険の被保険者では、給付内容に差がありましたが、現在、給付面でのメリットはあまり実感できません。しかし、保険料を考慮し、任意継続被保険者を選択する人が多いようです。

国民健康保険では、前年度の所得等を基準として、保険料(税)が決まります、一方、健保では、標準報酬月額を基準として、保険料が決まります。

任意継続被保険者の標準報酬月額は、「退職時の標準報酬月額」か、「その人の属している保険グループ(協会けんぼ、健康保険組合)の標準報酬月額の平均額」のいずれか低い方の額になります。

協会けんぽの人が退職した場合、標準報酬月額が28万円未満なら退職前の標準報酬月額、28万円以上なら28万円となります。

退職者が40歳以上65歳未満なら、介護保険料も併せて徴収されます。保険料の計算式は、次のとおりです。

標準報酬月額×(一般保険料率+介護保険料率)

在職期間中、保険料は労使折半負担となります。しかし、任意継続被保険者になると、被保険者が全額を負担します。ですから、一般に「保険料は2倍になる」といわれています。しかし、2倍にならないケースも少なくありません。

まず、標準報酬月額が28万円を超える人については、退職前と退職後で保険料算定のベースとなる金額(標準報酬月額)が異なります。在職中に高給取りだった人は、退職前と後で保険料にあまり差がないというケースもあります。

次に、介護保険料率は全国一律(平成25年度は1000分の15.5で据え置き)ですが、一般保険料率(健保の保険料率)は都道府県で異なります。

任意継続被保険者は、住所地の協会けんぽ支部に資格取得申出書を提出します。保険料については、「適用事業所に使用される被保険者は事業所の都道府県、任意継続被保険者は『住所または居所』を有する都道府県」の保険料率を適用します(健保法第160条)。

ですから、会社と自宅が別々の都道府県にある場合、退職前と後で保険料も微妙に違うというパターンが発生します。

▲画面トップ

 

 
  労務相談と判例> 健康保険の相談

Copyright (C) 2013 Tokyo Soken. All Rights Reserved

東京労務管理総合研究所