傷病手当金と基本手当の調整 (2015年11月号より抜粋)  
     
 

傷病手当金を受給中の従業員が退職するが雇用保険の給付受けられないか

 

Q

体調不良で、健康保険から傷病手当金を受給中の従業員がいます。定年間近なので、早めに退職する方向で調整しています。長年、勤務しているので、雇用保険の基本手当もそれなりの額がもらえると思います。両方を申請すれば、受給できますか。

 

 
 
A

傷病手当金受給中は基本手当を受給することができない

健康保険の資格喪失日の前日まで1年以上被保険者であった人は、退職後も引き続き傷病手当金を受給できます(健康保険法第104条)。お尋ねの方は、「長年、勤務していた」ということですから、被保険者期間の要件は問題ないでしょう。

一方、失業給付(基本手当)を受給する前提として、ハローワークに出頭する必要があります。受給資格を得るための条件は、以下のとおりです。

  1. 離職により被保険者資格喪失

  2. 労働の意思・能力を有するにもかかわらず、就職不能

  3. 原則離職日前2年間に被保険者期間12ヵ月以上

1.3.の条件はクリアできますが、2.についてはムリと思われます。求職を申し込んだ後も、待期期間・給付制限期間経過後、失業認定日(28日に1回)にハローワークに行き、求職活動の実績を示して、初めて手当を受給できます。

当面、健保から傷病手当金を受給できるのですから、雇用保険の方は「受給期間延長」の手続を採るのがよいでしょう。傷病等で30日以上職業に就くことができないときは、申出により受給期間を最長4年まで延長できます(雇用保険法法第20条)。

ちなみに、雇用保険には傷病手当という給付も存在します。こちらは、傷病等で15日以上職業に就くことができない場合に支給されます(第37条)。ただし、「求職の申し込みをした後に就労不能となること」が要件となっています。退職の時点で既に病気であれば、いきなり傷病手当の申請をすることはできません。

また、「健保の傷病手当金を受けることができるとき」は、雇用保険の傷病手当は支給されません(健保優先)。

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