時間単位年休の時季変更権 (2016年4月号より抜粋)  
     
 

重要案件がある時間帯を指定する時間単位年休でも請求拒否できないか

 

Q

当社では、労使協定を締結して、時間単位年休制度を導入しています。従業員の評判も良いのですが、先日、トラブルが発生しました。ある従業員が、外部顧客と重要なアポイントがあったにもかかわらず、その時間帯に時間単位年休を請求してきたのです。この場合、時季変更権の行使が可能でしょうか。

 

 
 

年休取得時間帯の変更は可能

年休は1日単位の請求が原則です。しかし、過半数労組(ないときは過半数代表者)と労使協定を締結すれば、時間単位の付与も可能となります。協定では、次の事項を定めます(労基法第39条4項、労働基準法施行規則第24条の4)。

  1. 時間単位年休を与える労働者の範囲

  2. 時間単位で請求できる年休の日数限度(5日以内で定めます)

  3. 時間単位年休1日の時間数
    具体的には1日の所定労働時間以上で定める必要があります。1時間に満たない時間数は時間単位に切り上げます。

  4. 1時間以外の時間を単位として時間単位休暇を与える場合のその時間数(2時間単位など)

1.にあるとおり、全従業員を対象として制度を設ける必要はありません。「一斉に作業を行うことが必要とされる労働者」等については、その性質上、時間単位付与になじまないと考えられる(平21・5・29基発第0529001号)ので、対象から除外することも可能です。

範囲等を決め、制度を導入した後は、基本的には従業員の時季指定に応じて、時間単位年休を与える義務が生じます。

時季指定を制限する次のようなルール設定は、認められません(前掲解釈例規)。

  • 時間単位年休を取得することができない時間帯を定める

  • 所定労働時間の中途に時間単位年休を取得することを制限する

  • 1日に取得できる時間単位年休の時間数を制限する

お尋ねのケースでは、本人が時季指定した時間帯が「外部顧客との重要なアポイントメント」とバッティングしてしまいました。

従業員本人は、「時間単位年休は、取得する時間帯を指定できるからこそ意味がある。会社が勝手に時間帯をずらすことができるのなら、時間単位年休の存在価値がない」と考えているのかもしれません。しかし、解釈例規では、「時間単位年休についても、使用者の時季変更権の対象になる」という立場を採っています。

注意が必要なのは、「労働者が時間単位による取得を請求した場合に日単位に変更することや、その逆の形で(日から時間単位へ)変更することは、時季変更に当たらず、認められない」点です。

「重要なアポイントメント」は、ご質問の従業員が出席することを前提に設定されたものでしょうから、「事業の正常な運営を妨げる」場合に該当し、時季変更権が認められる可能性が大きいといえるでしょう。もちろん、親族が突然病気になった等の特別の事情があれば、話はまた別です。

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