傷病手当金の計算方法の変更 (2016年6月号より抜粋)  
     
 

健保・傷病手当金の計算方法変更により給付水準は下がったのか?

 

Q

ヘッド・ハンティングで雇い入れた従業員が、私病でしばらく入院します。予定していたプロジェクトは大幅に遅れそうな情勢です。本人は年休も発生しておらず、健保の傷病手当金を受給させます。最近、傷病手当金の計算方法が変わったと聞きますが、以前と比べて保証の水準が異なるのでしょうか。

 

 
 

入社すぐの人は給付水準が下がる場合も

平成27年5月29日に「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律」が公布されました。平成28年4月1日から、それに基づき傷病手当金・出産手当金の計算方法が変更されています。

出産手当金は、被保険者が療養のため労務に服することができないとき、第4日目から支給されます(健康保険法第99条)。最初の3日間は「待期期間」で、給付はありません。

従来、傷病手当金の金額は、「標準報酬日額(支給時点の標準報酬月額の30分の1)」をベースとしてその3分の2を支給すると定められていました。しかし、今回の改正で、ベースとなる金額を、「標準報酬日額」から「傷病手当金の支給開始日の属する月以前12ヵ月の標準報酬月額を平均した額の30分の1」に変更しました。

平均額に「5円未満の端数があるときは切り捨て、5円以上10円未満の端数があるときは10円に切り上げ」ます。被保険者の収入に大きな変化がない場合、「標準報酬日額」を使おうと、「平均標準報酬月額の30分の1」を使おうと、それほど違いはありません。

しかし、一部の事業主の中には、傷病手当金の金額をアップさせるために、休業直前の収入を「操作」するケースもみられたといいます。

そうした事情も考慮し、「被保険者の収入レベルをより適切に手当金の金額に反映させる」ために、制度の見直しが実施されたものです。

原則的には、「直前12ヵ月の標準報酬月額の平均の30分の1」を基準として手当金を計算します。ただし、「支給開始日の属する月以前の期間が12月に満たない場合」については、例外が設けられています。この場合、次の金額のうち、「低い方」を用いて計算します。

  1. 傷病手当金の支給開始日の属する月以前の期間の標準報酬月額を平均した額の30分の1

  2. 傷病手当金の支給開始日の属する年度の前年度の全被保険者の標準報酬月額平均の30分の1

「全被保険者の平均」については、任意継続被保険者の標準報酬月額を決める際に用いる額と同様で、協会けんぽの場合、平成28年度は28万円となっています。

ご質問の従業員は、まだ「年休が発生していない」のですから、入社6ヵ月未満と思われます。ヘッド・ハンティングで招聘(しょうへい)した人材ですから、そこそこの高給が支払われているかもしれません。しかし、28万円以上の給与であったとしても、28万円をベースに傷病手当金を計算します。

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