平成28年10月 社会保険の適用拡大 (2016年10月号より抜粋)  
     
 

パートの社会保険加入要件が緩和されるが中小・零細への影響は?

 

Q

平成28年10月から社会保険の適用拡大がスタートします。当社は、中小レベルで、当面、関係がないようです。確認ですが、今回、対象となったのはどのような条件を満たす企業なのでしょうか。今後、中小企業の取扱いはどうなるのでしょうか。

 

 
 

3年程度は適用を猶予される

適用拡大により、これまで社会保険の加入義務のなかった短時間労働者であっても、資格取得の手続が必要になる人が生じます。要件は、次のとおり定められています。

  1. 週所定労働時間20時間以上
  2. 1年以上使用見込み
  3. 報酬が月額8.8万円以上
  4. 学生でない
  5. 特定適用事業所に勤務

特定適用事業所(5)以外の事業所では、1〜4の条件に合致しても、社会保険の資格取得の必要がありません。貴社も、この「特定適用事業所以外」に含まれるものと思われます。

特定適用事業所とは、「事業主が同一である事業所で、通常の労働者・これに準ずる者の総数が常時501人以上である事業所」をいいます。

事業主が同一であるとは、基本的に「同一法人格に属するすべての適用事業所」を指します(個人事業主のときは、同じ個人事業主が経営する事業所)。法人事業所の場合、マイナンバー制度の法人番号が同じである本社・支社・工場・営業所等が含まれます。

総数501人以上の数え方ですが、通常の労働者とは「いわゆる正社員・正規型従業員」を意味すると考えてよいでしょう。具体的には、パート労働法2条で定める通常の労働者の定義が用いられます。(平26・7・24雇児発0724第1号

)これに準ずる者とは、「週の所定労働時間・月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上」ある者をいいます。おおむね、これまでパートで社会保険の加入対象になっていた人と理解すればよいでしょう。

特定適用事業所となるのは、「常時」501人以上となる企業です。瞬間風速で人数が増えても、関係がありません。常時とは「1年間のうち6月間以上500人を超えることが見込まれる場合を指す」と定義されています(平28・5・13保保発0513第1号)。

この要件を満たす、または満たす可能性のある企業には、日本年金機構等から通知が届きます(特定適用事業所該当通知書または該当する可能性のある旨のお知らせ)。

通知を受けない企業は、適用猶予の対象となります。

適用猶予は「当分の間」ですが、改正法の附則では「短時間労働者に対する厚年・健保の適用範囲について、平成31年9月30日までに検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講じる」と定めています。

また、適用範囲拡大に合わせ、平成28年10月から、厚年の標準報酬月額等級の下限が引下げられる(9.8万円から8.8万円へ)点にも注意が必要です。

▲画面トップ

 

 
  労務相談と判例> 健康保険の相談

Copyright (C) 2017 Tokyo Soken. All Rights Reserved

東京労務管理総合研究所