退職時の証明を拒否できるか (2017年3月号より抜粋)  
     
 

一方的に退社した元従業員から退職証明の請求あったが拒否可能か

 

Q

かなり以前に退職した従業員から、「職務経験を示す書類として退職証明書を発行してほしい」という要請を受けました。再就職予定先に提出する書類のようです。再三の慰留にもかかわらず、一方的通告により退社した従業員で、正直いうと、あまり協力したくありません。拒絶すると、問題になるでしょうか。

 

 
 
A

時効(2年間)になるまで交付義務あり

転職に際し、専門的業種・職種の場合、職務経歴が重要な意味を持ちます。退職従業員の方が要請しているのが労働基準法第22条に基づく「退職時等の証明」であれば、法律に基づいて対応する必要があります。

退職証明書は、「労働者が請求した場合、遅滞なくこれを交付する」義務があります。

交付の時期は、法文上は「退職の場合において」となっていますが、必ずしも退職と同時に請求しなければならないものではありません。

就職活動がうまくいかず、同じ従業員が何度も証明書発行を求めるケースも想定されます。しかし、その場合も、「証明を求める回数について制限はない」と解されています(平11・3・31基発第169号)。

一方、退職時の証明についても、「労基法第115条」の適用があります(前掲通達)。同法では、賃金その他の請求権について2年の時効を定めています。

退職時の証明も、「その他の請求権」に含まれるという解釈です。お尋ねのケースでは「かなり以前に退職」ということですから、2年を経過していれば、法律的には交付義務が消滅しています。

退職証明書の記載事項は、次のとおりです。

  1. 使用期間

  2. 業務の種類

  3. その事業における地位

  4. 賃金

  5. 退職の事由

今回の要請は@〜Bに関するものです。証明書には、労働者が請求した事項のみを記載すれば足ります。

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