労使協定と出向社員 (2017年4月号より抜粋)  
     
 

過半数代表者を選出する際に出向社員の意見も聴く必要あるか

 

Q

今年も、時間外・休日労働(36)協定の締結時期となりました。例年と異なるのは、事業上のパートナー会社から、技術指導の名目で出向社員を受け入れた点です。過半数代表を選出する際、この出向社員の意見も聴く必要があるのでしょうか。

 

 
 
A

出向社員も所属労働者に含まれる

出向は、「出向元・先の双方と労働契約関係(2重の雇用関係)があるので、それぞれ契約関係が存する限度で労働基準法等の適用がある」とされています(昭61・6・6基発第333号)。

労働時間に関しては、一般的に出向先の指揮命令事項といわれます。このため、「36協定は、出向先との間に締結されなければならない」という解釈となります(昭35・11・18基収第4901号の2)。

つまり、出向社員が何時間まで残業できるかは、出向先の36協定に基づき、決まります。

出向先は、過半数労組があるときはその労組、ないときは過半数代表者を当事者として、36協定を結びます。過半数選出の母体となるのは、「事業場に所属するすべての労働者」です。

労基法でいう労働者とは、「事業に使用される者で、賃金を支払われる者」を指します(第9条)。役員(兼任役員を除きます)は、この定義に該当しないので母数の労働者には含まれません。また、派遣労働者や業務請負の労働者等は、「当該事業場の労働者」ではない(他社の労働者)ので、やはり除外の対象です。

しかし、こうした除外対象に該当しなければ、正社員だけでなく、パート・契約社員等も過半数の母数となります。管理監督者等も、過半数代表者にはなれませんが、「事業場に所属する労働者」に含まれます。

出向労働者も、「その性質上、2重の労働契約関係に立つので、出向先・元の両方において母数に算入される」という見解が示されています(安西愈「労働時間・休日・休暇の実務」)。ですから、選挙等に参加すると同時に、意見等を発表する権利も有します。

▲画面トップ

 
  労務相談と判例> 労使の関係の相談

Copyright (C) 2017 Tokyo Soken. All Rights Reserved

東京労務管理総合研究所