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アクアフェアリー(株)

■「燃料電池ベンチャーが水素時代、IoT時代を切り開く」

業種:燃料電池の開発販売
アクアフェアリー(株)

「水素社会」=水素を主要なエネルギー源として日常生活や産業活動に利活用する社会=に向けた取り組みが各方面で活発化し、多くの成果が生まれている。アクアフェアリー(京都市、相沢幹雄社長)が開発した、オンデマンド・水素発生方式のポータブル燃料電池もその一つ。「小型軽量、大容量を兼ね備え、新用途、新市場を創造する可能性を秘めている」(石坂整副社長)という同電池は、今秋、完成し、来年1月発売の運びにある。首尾よく新市場を創造できれば、水素社会への道がさらに開かれる。

同社は平成18年(2006年)に、大手化学品メーカーの役員を務めた相沢氏が、石坂氏をはじめとする部下の技術者らとスピンアウトして立ち上げた。設立当初は、ポケットに入るような小さな燃料電池の開発を目指したが、リチウムイオン電池の高機能化、低価格化の波にのまれて、ポケットサイズ燃料電池の訴求力は低下。方向転換を余儀なくされて、可搬で高出力、大容量といった燃料電池に目標を切り替え、いくつものブレークスルーの末に目標を達成する。

最大のブレークスルーといえるのが、通常の燃料電池がボンベやタンクに貯蔵した圧縮水素を利用するのに対し、圧縮水素を使わない「オンデマンド・水素発生方式」の開発だ。水の電気分解の“逆反応”となる燃料電池では、燃料となる水素と酸素との電気化学反応により電気をつくりだす。その水素をどう供給するか…。同社では圧縮水素の代わりに水素発生剤(水素化カルシウム)を用意。電気を使用するその場で、水素をつくって低圧のまま水素を利用できる方式を編み出した。

「その場」での水素のつくり方は、水素化カルシウムに水を加えるだけ。「水素化カルシウムと水の激しすぎる反応性を和らぐようにしたのがポイントで、国際特許を取得した」(石坂副社長)。これにより、重くてかさばる圧縮水素貯蔵ボンベ/タンクを不要にし、燃料電池装置一式の小型軽量化・大容量化を可能として、安全性も高めた。来年1月発売の同社製燃料電池は、避難所の非常用電源、電気が通らない山小屋などでの利用、そして、来るべきIoT(モノのインターネット)時代の需要を見込んでいる。

石坂副社長は「IoTの普及に伴い、各種の計測機器や観測機器を無人で長時間稼働させるセンサーネットワークのニーズが顕在化する。商用電源のない場所でも、長時間駆動できる当社の燃料電池は、センサーネットにぴったりフィットする」と自信をのぞかせる。来年は設立から10年目。節目の年に、水の妖精(アクアフェアリー)が、水素時代、IoT時代に向けて吹く風に乗り、軽やかなステップを踏み出しそうだ。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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