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(株)TANOI

■「ベトナム難民と出会い、町工場がグローバル化へ突き進む」

業種:精密部品製造
(株)TANOI

今でこそ、日本企業の"ポストチャイナ作戦"=東南アジア諸国連合(ASEAN)各国への進出が相次いでいるが、10年ほど前、ポストチャイナを先取りする格好で、いち早くベトナムに拠点を構えた中小企業がある。精密部品製造のTANOI(栃木県鹿沼市、田野井純一社長)がその会社。「6億人のASEAN市場をターゲットに工場を建設した」(田野井社長)というグローバル戦略は、時代の追い風を受け、帆を一杯に膨らませた、まさに順風満帆の事業展開を具現化しつつある。

昭和28年に発足し、社歴60有余年の同社を率いる田野井氏は、9年前の平成18年に3代目社長に就任する。社長就任の少し前、ひょんな縁からベトナム難民が同社で働くことになった。そのベトナム人との出会いが同社ベトナム進出の原点となる。「目力が印象的で、強いパワーが感じられた」(同)。引き続き、実習生として受け入れた3人のベトナム人にも同様の目力があったことなどから、田野井氏のベトナムへの関心は一段と高まり、社長に就く平成18年、初の海外拠点となるベトナム現地法人の設立に踏み切る。

ヒト、モノ、カネの3要素で苦労が尽きない典型的な中小製造業の同社を、どう舵取りしたらいいのか。田野井社長は「アリ地獄のような状況から何とかして抜け出せないものか」とずっと思い悩んでいたという。医療機器や自動車向け部品、とくに高速で回転する部品の精密加工を得意とし、技術には自信がある。しかし、新興国とのコスト競争は厳しさを増すばかり。モノづくり産業の空洞化が進み、少子高齢化から国内市場の縮小は避けられない…。そうした諸状況を踏まえた新機軸、打開策がベトナム進出であった。

同社のベトナム工場は、工場長、管理部門トップ以下、すべてベトナム人で運営している。「目が良くて、手先が器用なベトナム人は、ワーカーとしては優れていても、管理者としては疑問符が付くとされていた。しかし、それは経験がないだけだと考え、最初から彼らに役割を与えた」(田野井社長)。結果オーライで、100%現地化の同工場は、低コスト、高品質の生産拠点として重要な役割を担って今日に至る。

TANOIでは中長期経営計画のなかで、日本のマザー工場化・高収益業務への転換、海外現地生産化による高効率生産、アジア新興国を中心とした販路開拓−を打ち出している。日本を含む各拠点がそれぞれの持ち味を発揮し、"全体最適"となるグロ―バルな経営体制を確立しようといったもので、スローガンとして「町工場からグロ−バル企業への脱却!」を掲げている。生まれも育ちも鹿沼市の中小製造業が、ベトナム難民の目力に導かれ、グローバル企業への道を突き進んでいる。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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