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(株)東新製作所

■「金属3Dプリンター+町工場の技術・経験で勝負」

業種:金型製造など金属加工
(株)東新製作所

各種の樹脂が対象となる通常の3Dプリンターに対し、金属を取り扱う金属3Dプリンターが、ここへきて俄然、注目されている。その金属3Dプリンターに、いち早く着目し、大手メーカー製品のファーストユーザーとなって、新規分野の開拓に乗り出したのが東新製作所(東京、石原幸一社長)だ。同社では「培った技術や経験を乗せられ、自社製品にもつながる。コスト競争で仕事が海外に流れた日本の(製造業の)生きる道だ」(石原社長)と、金属3Dプリンターをてこに、ものづくり日本復権の一翼を担おうとしている。

同社は昭和45年(1970年)創業の製缶・板金加工業者で、町工場の集積地、東京・大田区に本社・工場を構える。2代目社長である石原社長の「加工、設計、製品の3つをうまく回していくことが大切」との考えに基づき、受託加工の一方で、タイヤの運搬費低減に役立つ、異なる大きさのタイヤを入れ子にする装置などを製造・販売している。その延長線上で今、挑戦中なのが金属3Dプリンターを駆使した金型作りや自社製品の開発だ。

金属製の部品や製品を作れる金属3Dプリンターは、従来、主に欧州勢の製品が市場に投入されてきたが、使いこなすのが難しい、価格が高い、用途が限定されるなどから、ユーザーは限られていた。しかし、ここへきて国内大手工作機械メーカーが相次ぎ製品化するなどで様相は一変。東新製作所はそうした流れをいち早く捉えて、国産金属3Dプリンターの第1号ユーザーとなり、同プリンターによる新市場の開拓を狙っている。

金属粉末をレーザーの熱で溶融、焼結させ、一層ずつ積み上げていく粉末焼結積層法を採用した同機は、冷却水の配管を走らせる複雑形状の金型など、従来の工作機械では困難だったものも製作できるようになる。大きな可能性を持つ金属3Dプリンターだが、未知なる部分が多いのも事実で、そこに町工場の技術・経験を生かせるというわけだ。「3次元造形技術を核としたものづくり革命プログラム」で金属3Dプリンターなどの開発を推進中の経産省では「中小企業が持つものづくり技術と融合し、少量多品種の高付加価値品の製造技術を高める」と“革命”の趣旨を語っている。その先駆事例ともなる同社である。

石原社長は大田区中小企業の2代目、3代目経営者らに声をかけ、大田区モノづくり・加工技術集団「おおたグループネットワーク」を立ち上げるなど、地域ぐるみの発展にも取り組んでいる。そんな大田区も、大手企業の海外進出に伴う国内空洞化のあおりを少なからず受けており、工場数はピーク比で6割以上も減っている。「金属3Dプリンターを、大田区を変えるきっかけにしたい。大田区の技術が世界一だとアピールしたい」(石原社長)との思いがかなえば、産業の空洞化が止まり、“逆流”が起こるかもしれない。


著作者:e-中小企業庁&ネットワーク
出典:中小企業ネットマガジン


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