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実務相談 年金の失権事由(2019年6月号より抜粋)


遺族補償年金を受給中のパートさんが結婚するが継続して受給可能?

 

Q 当社で働く正社員とパートさんが、近く結婚するということです。ところが、このパートさん(女性)は数年前に夫を労災事故で亡くし、遺族補償年金を受けています。「結婚すると、年金がもらえなくなる」という話も聞きますが、どうなのでしょうか。

 

A 子どもがいれば転給

 労働者が業務上災害でお亡くなりになった場合、家族に対して遺族補償給付が支給されます。
対象となるのは、死亡労働者と生計維持関係にあった次の家族です(労災保険法第16条の2、附則43条)。
①妻(事実婚含む)
②夫・父母・祖父母(55歳以上)
③子・孫(原則として18歳に達した日以後の最初の3月31日まで)
④兄弟姉妹((原則として18歳に達した日以後の最初の3月31日まで、または55歳以上)
年金を受ける受給権者はこの家族のうち「順位がもっとも先の者(最先順位者)」です。
順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹となっています。
ただし、労災保険では、厚生年金と異なり、「転給」というシステムが設けられています。第1順位者が失権しても、第2順位者(後順位者)が引き続き年金を受給できます。失権理由は、次のとおり定められています(労災保険法第16条の4)。
i死亡
ii婚姻(事実婚含む)
iii直系血族・直系姻族以外の者との養子縁組
iv養子縁組の解消
v子・孫・兄弟姉妹の制限年齢到達
vi障害により受給資格者となった人の障害非該当
ですから、妻が結婚すれば遺族補償年金の権利はなくなります。ただし、年齢要件に該当する子どもがいれば、そちらに転給となります。新しい配偶者(夫)と子どもが養子縁組しても、直系姻族ですから、子どもの権利に影響はありません。