パート・有期雇用労働法(2019年8月号より抜粋)
同一労働同一賃金のほかに非正規社員を対象に必要な施策は?
Q 働き方改革関連法により名称の変わった「パート・有期雇用労働法」ですが、改正の趣旨は「同一労働同一賃金」の徹底と理解しています。今後、正規・非正規間の格差是正に努める所存ですが、そのほか、実務的には、どのような対応が必要でしょうか。
A 労働条件通知書・就業規則の整備等も
現在(改正前)のパート労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)は、令和2年4月1日からパート・有期雇用労働法(短時間労働者および有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)に衣替えします。ただし、中小企業については、適用が1年間猶予されます。
改正後は、パート、有期雇用労働者ともに、第8条(不合理な待遇の禁止)、第9条(正社員と同視すべきパート・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)等の規定に基づき、均衡・均等待遇の実現を図る必要があります。
そのほか、改正法の対象に有期雇用労働者が加わったことに伴い、実務の現場で具体的な対応が求められる事項が多々あります。
第1に、労働条件通知書の様式を確認する必要があります。現在、パートに関しては、労基法で定める労働条件通知事項(第15条)に加えて、「特定事項」も書面等により明示しなければなりません(パート労働法第6条)。
特定事項は、昇給・退職手当・賞与の有無、雇用管理の改善等に関する相談窓口の4種類です。改正法の施行後は、有期雇用労働者に対しても特定事項を通知します(パート・有期雇用労働法第6条)。
併せて、「雇用管理の改善等に関する相談窓口」では、有期雇用労働者からの相談にも対応する体制を整備する必要があります(同16条)。
第2に、就業規則の作成手続です。現在は、パートに関連する就業規則変更等を実施する際には、「パートの過半数代表者」の意見を聴取する努力義務が課されています。改正後は、有期雇用労働者にも対象範囲が広がります(パート・有期雇用労働法第7条)。
考え方としては、両方合わせて1人(1労組)の過半数代表者ではなく、パート・有期雇用労働者それぞれについて過半数代表者を選任することになります(もちろん、両者が一致するケースも多いでしょうが)。
第3に、「正社員への転換制度」についても留意する必要があります。具体的な転換制度を設けるほかに「正社員募集時にその旨を対象者に通知する」等の仕組みでもよいとされていますが、この通知等の対象者に有期雇用労働者も含めなければなりません(パート・有期雇用労働法第13条)。
最後に、改正後は、有期雇用労働者も「均衡待遇等に関する説明義務」の対象となります。説明には、「雇入れ時(パート・有期雇用労働法第14条1項)」と「本人から求めがあった際(同条2項)の2種類があります。法改正に伴い、説明が必要な事項も追加されているのマ、条文等により確認しておいてください。