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葬祭給付(2019年8月号より抜粋)

労働者が通勤災害に遭ったとき近親者以外でも費用請求ができるか

 

Q 従業員と雑談中、通勤災害の話になりました。親族の中に通勤中にお亡くなりになった入がいて、父母・配偶者等がいないため、その方が葬祭を執り行ったということです。私の記憶では、近親者以外の場合でも、健保または労災保険で費用の請求ができたように思います。今からでは遅いのでしょうか。

 

A 「葬祭を行う者」が対象
葬儀関連の給付というお話ですが、健保には「埋葬料・家族埋葬料」、労災保険には「葬祭料・葬祭給付」という項目があります。
ただし、埋葬料・家族埋葬料に関しては「労災保険からこれに相当する給付を受けることができる」場合、調整が行われる(労災優先)規定となっています(健保法55条)。質問中にある従業員のご親族は、通勤災害であり「葬祭給付」の対象になるので、健保ではなく労災保険の請求を行うことになります。葬祭給付は、「労働者が通勤により死亡した場合に、『葬祭を行う者』に対し、その請求に基づいて」支給されます(労災保険法第22条の5)。
金額は、31万5,O00円に給付基礎日額相当額(おおむね平均賃金額と同様)の30日分を加えた金額です。ただし、その金額が給付基礎日額の60日分に満たないときは、60日分の金額が支払われます(労災保険則第18条の11により第17条を準用)。
葬祭を行う者とは、一般には遺族給付を受ける家族等が考えられます。しかし、「対象者がいない場合には、それ以外の遺族またはそれに代わって葬祭を行うにふさわしい立場にある者」が請求することもできます。
葬祭給付には、2年の時効が適用される(労災保険法第42条)ので、権利が消滅していないか確認が求められます。ただし、注意が必要なのはその起点です。実際に葬儀を行った日ではなく、「労働者が死亡した日の翌日から時効が進行する」と解されています(労災保険法コンメンタール)。