遅刻2回で1日欠勤扱いは法違反? (2005年7月号より抜粋)  
     
 

遅刻2回で1日欠勤扱いにすると法律違反で罰せられるのでしょうか?

 

Q

当社では、1回の遅刻・早退を欠勤0.5日として処理しています。2回遅刻すると1日の欠勤となり、1日分の賃金がカットされます。最近、労働組合から、この扱いは法律違反ではないかという疑念が表明されましたが、改める必要がありますか。

 

 
 

A

賃金カット額が大きすぎ、労働基準法違反

貴社では、遅刻・早退時間の長短に関わらず、一律、半日の欠勤として処理しておられるようです。たとえば、30分しか遅刻していないのに、4時間分(所定労働時間8時間として、その半分)の賃金をカットすることは、原則的には許されません。

しかし、遅刻・早退を規則違反と捉え、懲戒処分として賃金を減額することは可能です。行政解釈では、「この場合就業規則中に特に制裁の規定を設けてその中に規定する等の方法によって制裁である旨を明らかにする方が問題を生じる余地がないから適当である」(昭26・2・10基収第4214号)と注意書きを付しています。

懲戒処分として減給を実施するのなら、労働基準法第91条の制限を受けます。同条では、減給額は「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」と定めています。平均賃金は、公休日も含めた1日当たりの賃金です。ですから、労働日1日当たりの賃金より、金額は低くなります。

遅刻1回について、半日分の欠勤処理(労働日1日当たりの賃金の半額をカット)すると、平均賃金の2分の1という制限を超えてしまいます。ですから、労働組合の疑念は、根拠のない話ではありません。早急に改める必要があります。

よくある処理法としては、「3回遅刻したら、1日欠勤したとして賃金カットする」という仕組みです。「3回遅刻したことをもって、1つの懲戒事由が生じた」と解して、遅刻3回で平均賃金の2分の1までしかカットできないと、厳密に判断する意見もあります。

しかし、「遅刻3回なら、0.5日分×3回で(平均賃金の)1.5日分のカットができるので、遅刻3回で1日分の欠勤とみなしてカットすることも労基法上は適法である」(安西愈弁護士「採用から退職までの法律」)という解釈の方が実務的には穏当でしょう。その場合も、減給の総額が一賃金支払期における賃金(通常は月給)の10分の1を超えていないか、どうか、チェックが必要です。

ただし、直接、賃金を減額するのではなく、人事考課に反映する方法もあり得ます。たとえば、賞与の査定に際し、出勤率に応じて支給率を調整する仕組みを設ける会社も少なくありません。

その際、「遅刻・早退2回をもって欠勤1回に換算する」という規定を設けても、違法は生じません。

これは、あくまでも賞与をどのように計算するかという問題で、会社の裁量範囲内に属します。従業員の定時出勤・定時退勤を奨励したいのなら、むしろこちらの方法を検討すべきでしょう。

 

 
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