深夜割増賃金の対象時間帯 (2015年9月号より抜粋)  
     
 

深夜の時間帯を1時間遅らせる特例はどうやったら利用できるか

 

Q

顧客ニーズに対応するため、営業時間を延長し、夜10時までとする方向で検討しています。10時に閉店しても、残務処理で小1時間程度は居残る従業員もいます。深夜労働の割増賃金ですが、夜11時以降を対象とする特例があると聞きます。当社でも利用可能でしょうか。

 

 
 

特例が指定された実例がない

割増賃金の対象には、時間外労働、休日労働、深夜労働の3種類があります。

深夜割増について、法律の条文ではなんと書いてあるか、改めて確認してみましょう(労働基準法第37条4項)。「午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要と認める場合は、午後11時から午前6時まで)労働させた場合、2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない」

深夜割増は、深夜の時間帯(原則午後10時から午前5時)に就労させることで、支払義務が発生します。残業が延長されて深夜の時間帯に食い込むパターンが一般的で、時間外割増25%と深夜割増25%の合計50%の支払が必要となります。

ちなみに、「月60時間超の時間外に5割の割増賃金支払」を義務付ける規定は、中小企業を対象として猶予措置が設けられています。この猶予措置は、平成31年度に撤廃される方向です。

月60時間超の時間外労働が深夜の時間帯に重なったときは、割増賃金率が75%(50%+25%)になります(労働基準法施行規則第20条1項)。

所定労働時間が深夜に設定されているときは、深夜の割増(25%だけを支払います。

顧客対面型のサービス業では、集客量を増やす手段の一つとして、営業時間の拡大が挙げられます。

しかし、深夜の来客数は少なく、売上の絶対額が増えても、単位時間当たりの効率は高くありません。労働密度の低い時間帯に割増賃金を支払うのは、費用対効果という面で問題があります。

そこで、「厚生労働大臣が認める場合、午前11時から午前6時まで」というカッコ書きに着目されたのだと思います。

しかし、残念ながら「この特例は指定されたことがない」(労働基準法コンメンタール)のが実情です。今後も、仮に飲食店や小売店が嘆願運動を起こしても、実現の可能性は大きくないでしょう。

あまり実用的ではありませんが、関連するトピックを一つご紹介します。児童・年少者の深夜業の制限にも、深夜割増とよく似た規定が設けられています(労基法第56条、第61条5項)。「児童は午後8時から午前5時までは使用してはならない。厚生労働大臣は、必要であると認める場合、午後9時から午前6時とするができる」

こちらの規定に関しては、「演劇の事業に使用される児童(いわゆる演劇子役)については、当分の間、就労禁止の時間帯を午後9時から午前6時とする」という通達(平16・11・22基発第1122001号)が出されています。

▲画面トップ

 

 
  労務相談と判例> 労働時間の相談

Copyright (C) 2016 Tokyo Soken. All Rights Reserved

東京労務管理総合研究所